海の都の物語―ヴェネツィア共和国/塩野七生 [ 本の部屋]
今日紹介したいのは、「塩野七生ルネサンス著作集〈4〉— 海の都の物語—ヴェネツィア共和国の一千年」。
イタリアという国は、成立してまだ140年ほどの歴史しかない。ローマ帝国という超巨大国家があった後、本来の都市国家という姿で、存在していたこの地方は、お互い牽制しあい、侵略攻防の絶えない状態であった。
そんな時代にあって、一千年もの長きにわたり交易で欧州を席巻、自由と独立を守りつづけた海洋国家ヴェネツィア。異教徒との取引にも積極的であった一方、聖地奪還を旗印にする十字軍に荷担しつつ、これを巧みに利用して勢力範囲を着々と拡大する—そんな現実主義者たちが地中海を舞台に壮大なドラマを繰り広げる。
ヴェネツィアの土地も、こうした攻防に勝ち抜くために、人工的に注意深く作られたものである。都市の形態も住宅の姿も、また制度といったものも、すべてそのためにある。
現在の日本も、形こそ違え、自由と独立と繁栄を守り続けなければならない状況下にある。ヴェネツィアの繁栄が一千年であるのに比べ、日本の繁栄はまだ数十年。本当に難しいのは、繁栄に至ることではなく、繁栄を維持し続けることなのだということ。この書籍は、このことを明確に語っている。
塩野七生の文章は、明快で分かりやすい。時に熱く、時に冷静に...。塩野七生自身が、この歴史的な知恵の在処を十分に理解していることがよく分かる。
塩野七生の代表的な著作
塩野七生ルネサンス著作集〈4〉— 海の都の物語—ヴェネツィア共和国の一千年〈上〉
塩野七生ルネサンス著作集〈5〉— 海の都の物語—ヴェネツィア共和国の一千年〈下〉
ローマ人の物語〈1〉— ローマは一日にして成らず:塩野七生のライフワークの一つ「ローマ」
ローマ人の物語〈4〉— ユリウス・カエサル-ルビコン以前:やっぱりカエサルの章は、ドラマティックで見せ場も多い
ローマ人の物語〈5〉— ユリウス・カエサル-ルビコン以後:塩野七生の文章も熱い!
コンスタンティノープルの陥落:キリスト教世界とイスラム世界との激しい覇権闘争の歴史
痛快!ローマ学:古代ローマと日本の比較
三つの都の物語:繁栄するヴェネツィア、フィレンツェ、ローマも永遠ではない。16世紀前半、新しい国の台頭に衰退していく。日本も...
ローマの街角から:ローマから日本社会へのメッセージ
マキアヴェッリ語録:塩野七生的現実主義のベース
わが友マキアヴェッリ—フィレンツェ存亡:塩野七生は、マキアヴェッリを本当に愛している
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