陰翳礼讃/谷崎潤一郎 [ 本の部屋]
司馬遼太郎の対談集の中で、「闇は悪で、光は善、とするのは、アメリカ的...」と宮崎駿が言っていましたが、なにか現代は、明るさばかりが求められているような気もします。
かつて谷崎潤一郎は、「陰翳礼讃」の中で、全てを見せないことの美しさを語っています。日本の家屋の薄暗さが、美しさを生み、体をその輪郭ごと隠してしまう着物が、女性の仕草の美しさを際立てる、といった話が出てきます。
全て見せてしまったら、想像力は働かず、それ以上のものは...望めません(そうなったら、行くとこまで行かなきゃならないでしょうね...)。かつての日本の家屋や女性というのは、闇をもっていたり、闇の中にいたおかげで、実体以上の魅力を見せてくれていたのでしょう。逆に、美しさを語る上で、闇や陰がない世界では、語り口は限られてきます。
闇や陰は、想像力をかき立てることで、上品さや官能性を生み出しているのです。
空間を考えても、陰がなければ、ものは平面的で薄平く見え、広さや高さも感じることができません。陰がものに厚みを与え、生活にも厚みを加えていく...そんなことを感じさせてくれます。
「陰翳礼讃」には、収録されている「厠のいろいろ」は、この闇と陰の考え方の極地かもしれない。
陰翳礼讃/懶惰の説/恋愛及び色情/客ぎらい/旅のいろいろ/厠のいろいろ を収録
#本の部屋
bintenさん、nice! をありがとうございます。
by room7 (2008-08-20 00:08)
ジョウビタキさん、nice! をありがとうございます。
by room7 (2008-12-17 00:06)