小栗康平の「泥の河」-誰かの箱庭は...- [ 映画の部屋]
小栗康平はこれまでに5本の映画しかとっていない。 そんな彼の最初の作品が「泥の河」である。昭和30年代、第二次世界大戦の傷痕が人々の心に残っている時代。川辺に立つ食堂の子供と対岸に繋留された船で売春を営む母を持つ姉弟。 土手と橋に囲まれた川面がつくり出しているのは、限られた人にしか知られない箱庭のような世界。ひっそりと夢のような時間が流れている。 この箱庭は、誰かの原郷だろう...と同時に、見ている私にとっても、どこか懐かしい光景であったような...そんな気持ちになってくる。 簡単には言えないが、見ている側が無意識のうちに、内在する原郷の断片を掻集め繋ぎあわせ、個人を越えて共有できるものとして見ているのだろう。「家」を眺める一つの視点を与えてくれる。
◆小栗康平オフィシャルサイト
小栗監督本人による手記などが公開されている。
小栗康平監督作品集 DVD-BOX
埋もれ木
小栗康平の最新作。第58回カンヌ国際映画祭の「監督週間」に出品された。浅野忠信、坂本スミ子、田中裕子、松坂慶子ら名優が脇を固めている。「泥の河」とは違った側面が見れて面白い。
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