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百物語/杉浦 日向子 [ 本の部屋]

百物語

百物語

  • 作者: 杉浦 日向子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1995/11
  • メディア: 文庫



 先日、人名しりとりに登場した杉浦日向子の「百物語」を読んでみた。

百物語というのは、昔から、人々が寄り集まって怪談話をする時の、一つのスタイルで、一つ怪談話を終えるごとに行灯の灯心を一つずつ引き抜いていく...当然、だんだん暗くなる。そして、怪談話を百し終えると、妖怪が出てくるということなのだが、出てきてもらっては困るので、99話で止めるのが常である。

 このスタイルは映画などでも引用され、昔の大映映画「妖怪百物語」(こちらはロウソクを消していたと思う)では、手順を怠り、実際に妖怪が出てきてしまう。

 杉浦日向子の「百物語」の冒頭には、「古より百物語と言う事の侍る  不思議なる物語の百話集う処  必ずばけもの現れいずると」...と記している。実際には、そのような不調法なことはなく、99の話を語った後、線香が手向けられ静かに終わる。この辺りが、杉浦日向子なんだよな...。

 簡略化された白黒の絵と簡素な言い回しは、イマジネーションをかき立てる。

 そしてなにより、杉浦日向子は、当たり前のことのように「ばけもの」を語っている。自分に隣り合った日常の出来事を素直に絵と文にまとめているような、そんな印象を受ける。

 そういえば、NHKの「お江戸でござる」でも、杉浦日向子は当たり前のように「江戸」を語っていた。現代人が江戸を語るのではなく、江戸時代の人が、タイムマシンかなんかでこの世にやってきて、自分たちの生活を語っているかのようであった。

 杉浦日向子は、30代で漫画の世界から身を引き隠居生活を始め、旅行に出かけるという理由でテレビの仕事から身を引く。でも実際は、死と隣り合わせた病気を身近に置きながら生きる為であり、あるいは治療生活を送る為であったという。

 異なる時代や次元のことを、当たり前のように物語る... 「百物語」も「お江戸でござる」も、彼女にしかできない業であったと感じ入る。

 今日は十五夜。百物語に相応しい夜か...。

#本の部屋
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