堀内正和/無用を任じた彫刻家 [ アートの部屋]
好きな彫刻家に堀内正和(1911‐2001)がいる。
日本の抽象彫刻の代表的な作家で、草分け的存在。パブリックアートとして、屋外に設置されている作品もあるので、目にされている人も多いかと思う。
■既に終了した展覧会ではあるが、神奈川県立近代美術館鎌倉のサイトに、堀内正和の作品が紹介されているので、ご覧ください。
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/museum/exhibitions/2002/2003/exhibition2003k1/index.html
随分と前のNHKの番組の中で、堀内正和は、作品を机上で考え(神奈川県立近代美術館鎌倉のサイトにもアトリエの写真がのっている)、紙の模型を作って、それを鉄工所で組み立ててもらう...といったやり方をしていた。初期には自分で作っていたのか...それは知らない。
ただ、そうした堀内正和の製作方法が建築に似てる...と思ったことを覚えている。テレビでは、柔らかな表情で鉄工所の人と話をしていた。
あと印象に残っているのは、「戦後はラテン語を勉強していた。」と語ったことだ。「世の中の役に立たないことをやりたかった。」というのがその理由。
ラテン語は、古代ローマ時代に使われた、いわば当時の国際語で、書物などもラテン語で書かれていたわけだが、現在ラテン語を使用する人達はいない。学問としてのラテン語はあるが、現代での使用価値はまったくない...というものだ。
これを、堀内正和は勉強したという。
言うまでもなく、戦争というものは、「役に立つ」事柄の上に成立する。機械も人間も、その目的のためだけに存在するのが戦争だ。もっとも、「役に立つ」ことが求められるのは戦争に限らない。現代が、成長を求められる時代である以上、日常生活においても「役に立つ」ことが求められる。「役に立たない」ものは...捨てられる...人も? (その時代の戦争は、その時代を究極の姿で描いているともいえる)
堀内正和の作品は見ていて緊張しない。作品の周囲をぐるぐる回って、その形を理解しようとする。そして、ささやかな発見なんかがあったりすると、思わずニヤリと笑ってしまう...そんな感じだ。
■ギャラリーTOM 「堀内正和 アトリエのない彫刻家」の解説もいい
http://www.gallerytom.co.jp/ex_page/kako/2006horiuti.htm
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