ペルセポリス...破壊されたペルシャの都

映画「ペルセポリス」を見てきた。
イラン出身、在フランスの漫画家マルジャン・サトラピの自伝漫画を彼女自身がアニメ化したもの。

1970〜90年代のイラン／ウィーンの様子が描かれている。
ブルース・リーとビージーズとアイアンメイデンが好きな（ABBAは嫌いだったらしい）、イランに住む小学生マルジ（マルジャン・サトラピ）が、イラン革命やイラン・イラク戦争による社会の変化を目の当たりにし、友人や肉親を失い、圧政下のイラクを逃れウィーンの高校へ行き、失恋し、ホームレスになり、イランに戻り、美術大学にいき、結婚し、離婚し、フランスへ．．．という95分間のお話。

モノクロを中心にしたアニメーションが素晴らしい。簡潔な線、単純化された画面、無駄のないストーリー展開、ユーモアの装飾。

マルジの青春期の成長をたどると共に、イランという国に対するフィルターのない視点も与えてくれる。

ブルース・リーやビージーズ、ゴジラなどが登場してくると、同世代としての親近感が湧き、日本-イランという距離感（物理的、文化的、政治的，宗教的？）を急速に縮めてくれる（多分、他の国の人にとっても同じだと思う）。

そういえば、子供の頃、父親がイラン関係の仕事をしているという友人がいた。あの頃は、イランは今よりも、ずっと近い存在だった。イラン革命後、イランという国は、ずっと遠くの世界に行ってしまったような気がしていたが、この映画を見ると、そうではなく、こちらに伝わってこないだけで、イランの国の人々は、私たちと同じような感覚を持ち続けていたのだとわかる。

ペルセポリスとは、アケメネス朝ペルシア帝国の都で（もちろん、現在のイランにある）、紀元前331年、アレクサンドロス大王の攻撃によって破壊され、廃墟となった。ペルセポリスの名がはじめて歴史に登場するのは、古代ギリシアの歴史家クレイタルコスの著した『アレクサンドロス伝』であったという。即ちペルセポリスの名が記録されるのは、既に破壊された後のことである。ペルセポリスという名称は「ペルシアの都」と、「都市を破壊する（Persis（破壊するの意））」を掛けた一種の言葉遊びであったとも言われている。（引用：Wikipedia　http://ja.wikipedia.org/wiki/ペルセポリス）

破壊されたペルシャの都．．．戦争と革命によって物理的にも文化的にも破壊されたイランの様子を伝えるのに相応しいタイトルなのだろう．．と勝手に解釈した。それにしても、そんなイランに「PUNK is NOT DED」と書かれたジャンバーを着て町を歩いている女の子がいたとは．．．夢にも思わなかった。

ブラジャーに朝摘んだジャスミンを入れ、氷でバストを鍛える祖母が素敵だ。マルジに的確な助言を与える（見ている私に対しても）。人間として生きていく上で、何が一番大切なのか。

声優は、マルジ役ーキアラ・マストロヤンニ、母親ーカトリーヌ・ドヌーヴ（親子共演）、祖母ーダニエル・ダリュー。

2007年カンヌ国際映画祭審査員賞、2007年度アカデミー賞外国映画賞フランス代表作。イランはこの作品を非難している。

■「ペルセポリス」ホームサイト
http://persepolis-movie.jp/

■マルジャン・サトラピ監督 インタビュー
http://www.cinematopics.com/cinema/topics/topics.php?number=1095

■「ペルセポリス」ニュース
http://www.excite.co.jp/season/entertainment/sid_00151197021041.html

■「ペルセポリス」がよくわかる。製作過程、インタビューなど
http://www.afpbb.com/fashion/1595285
http://www.afpbb.com/fashion/1624682
http://www.afpbb.com/fashion/1623130
http://www.afpbb.com/fashion/1624717
http://www.afpbb.com/fashion/1617322
http://www.afpbb.com/fashion/1633181

ペルセポリス

• 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
• メディア: DVD

ペルセポリスI イランの少女マルジ

• 作者: マルジャン・サトラピ
• 出版社/メーカー: バジリコ
• 発売日: 2005/06/13
• メディア: 単行本

ペルセポリスII マルジ、故郷に帰る

• 作者: マルジャン・サトラピ
• 出版社/メーカー: バジリコ
• 発売日: 2005/06/13
• メディア: 単行本

刺繍―イラン女性が語る恋愛と結婚

• 作者: マルジャン・サトラピ
• 出版社/メーカー: 明石書店
• 発売日: 2006/07
• メディア: 単行本

#映画の部屋

タグ：映画 ペルセポリス イラン フランス映画 マルジャン・サトラピ アニメーション カンヌ国際映画祭 アニメ 漫画 映画監督

コメント 2

こんばんわ。
これ観たいです。予告で観て気になっていました。
イラン映画で話題になる作品は、母国では評価されない．．．
哀しいかな、これが今のイランの現実なんでしょうね。
by 江戸うっどスキー (2008-01-15 22:05) 

takagakiさん、nice!ありがとうございます。よい映画でした。

江戸うっどスキーさん、今晩は。久しぶりにゆっくり映画を見れました。見る側を引き込んでいってもらえると本当に助かります．．．というか、それがよい映画ってことですよね。
by room7 (2008-01-16 22:36)