ブリキの自動車/ネヴィル・スティード [ 本の部屋]
玩具屋の主人公の乗るビートル・コンウ゛ァーティブルは、「ポルシェのエンジンに幅広のタイヤを装備している。といってもやたらに太いタイヤをつけているのではなく、あくまでもパワーを吸収するためのものだった...」車好きには堪らない一説だろう。
私は、コレクターアイテムとしての玩具は、全然門外漢なので、どのような価値があるのか実感はわかないが、「シューコーの車」「コマンドアノー2000」「メルクリン製の玩具」「CR社のブリキ製自動車、デラージュで、じっさいに点灯するヘッドライトにいたるまで...」「藤細工でできた、黒とブルーのシトロエンのタクシー...20年代のシトロエンの工場で作られた新品同様の車」「パリのCIJで作られた...P2アルファ・ロメオ・レーシングカー」「1928年頃の、パリのJEP社製ロールス・ロイス・ファントム」「ベルリン型、あるいはセダンカ・ドゥ・ウ゛ィル・スタイルと呼ばれるボディのルノー」「JEP社製、二重カウル付きのイスパノ・スイザ・ツーリングカー」「ドイツのティップ社製の蒸気貨物自動車は、イギリスのセンチネル社の宣伝のための特注品」といった具合に、玩具を丁寧に語っていく様子に、作者の物へのこだわりを感じる。
時間を見るときも「時計」とは言わず、「セイコー」と言う...この本全体が、そうした作者のこだわりの産物だ。
1989年に初版が発行されている。当時は、まだ「開運!なんでも鑑定団」もなく、こうしたコレクションも広くは知られていない時代であった。
もちろん推理小説としても楽しめる。英国推理作家協会賞新人賞受賞作。
表紙のイラストは、西風氏。ビートル・コンヴァーティブルと赤のフェラーリ、P2アルファ・ロメオ・レーシングカーの玩具が描かれている。
■ネヴィル・スティードの作品
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