東京物語/小津安二郎 [ 映画の部屋]
小津安二郎の代表作「東京物語」に描かれている光景は、どこかで見たような懐かしさを感じさせるが、実は、普段見ることのない光景だ。たとえばロー・アングルの画面では、不作法に寝転がって相手を見ない限り、見えてこないものを見ることになる。
ロー・アングル...、長年、畳に座る文化の中で生活してきた日本人の表情やしぐさは、座っている時の視線を意識して形成されてきたもので、立った姿勢の視点を基準とする西洋式のカメラ視点では、相手のそれを正確に読み取ることはできない。だから、座っている日本人をきちんと捉えるためには、低い位置にカメラを設定する必要がある。
さらに、日本人の表情や立ち振る舞いは、伏目がちに、内に抑えられたものとなっているので、その奥に隠された感情を画面に表現するためには、もう一段低い位置にカメラを設置せざるを得ない...それがこの寝転がって相手を見る高さ、ロー・アングルだったのではないか...。
彼の映画の多くが家族をテーマにしている....
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小津安二郎先生の思い出 (朝日文庫 り 2-2) (朝日文庫 り 2-2)
- 作者: 笠 智衆
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2007/05/08
- メディア: 文庫
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